新型コロナウイルスの感染拡大に対する企業の対応の留意点

~従業員に感染が疑われる場合の措置~

 

1 新型コロナウイルスの現状

報道のとおり、新型コロナウイルスは感染経路が追跡不可能な患者が出現し、感染

力はインフルエンザと同等程度という報告もありますが、はっきりしていません。

 

新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜12.5日(多くは5、6日)だそうですが、無症状(潜伏期間中)の患者から感染したとする報告もあるようです。日に日に感染者が増えています。

 

2 感染が疑われる従業員に対する措置

さて、従業員が新型コロナウイルスに感染したと疑われる場合、企業はどのように

対応すればよいでしょうか。

 

(1)保健所への連絡

まず、その従業員から保健に連絡させる必要があります。

その後、保健所から具体的な指示がある場合はそれに従って下さい。

 

(2)自宅待機をさせる場合の対応

① 自宅待機の期間

保健所から具体的な指示がなくても、安全確保・危機管理の観点から会社判断で

自宅待機を命ずることはできます。

自宅待機の期間は、潜伏期間等に照らし、まずは14日間程度が妥当とされてい

るようです。

 

② 給与の取扱い

ア 新型コロナウイルスが疑われるような症状(発熱や咳など)があって就労でき

ない状態であれば、通常の病気欠勤と同じです。無給でも法的な問題はありませ

ん。

 

イ これに対して、症状のない従業員に自宅待機を命じる場合には、一応、就労可

能な状態であるため、無給とはできず、休業手当(労基法26条。平均賃金の6

割)の支払いが必要となります。

 

ウ また、在宅で勤務を命じる場合は正規の賃金の支払が必要となります。

 

~従業員が感染した場合の措置~

 

従業員が新型コロナウイルスに感染していることが判明した場合の具体的な対応は、次のとおりです。

 

(1)保健所からの連絡

従業員が新型コロナウイルスに感染していることについて、保健所からの連絡によって判明することがあります。

新型コロナウイルス感染患者を診断した医師は、直ちに保健所に届出をし、医師からの届出を受けた保健所は、情報収集のために関係者に対して質問・調査するができるため、会社にはこの段階で保健所から連絡が入ることになるのです。

ですので、保健所から連絡が入った場合は、可能な限り調査に協力して対応を相談してください。

 

(2)従業員本人からの申し出によって感染が判明した場合

保健所から連絡が入る前に、本人からの連絡等で感染者発生が判明することもあります。

そうした場合も、会社は速かに保健所に連絡して指示を受け、対応を相談してください。

この際、保健所から就業制限の指示まではなく、「自宅待機にした方が良い」という程度の指導・要請のレベルだと、最終的には就労させるか自宅待機させるかを企業が判断することになります。

新型コロナウイルスの症状が出ていて就業不能ならば、通常の病欠と同様に、無給でも問題ないですが、症状が出ていなければ、休業手当(平均賃金の6割)を支給した方が無難なケースが多いでしょう。

 

 

(3)知事からの強制入院・就業制限指示がされた場合

都道府県知事は、感染者を強制的に入院させたり、就業を制限する指示を出すことができるとされています。

 

こうした場合、従業員は就労不能となりますが、会社の責任による休業ではないので(労基法26条)、原則として賃金を払う必要はありません。

ただし、就業規則等で病気休暇制度があればそれに従う必要があります。

初回無料相談実施中 企業法務の専門家に、まずはお問い合わせください 四日市エース法律事務所