労働審判を起こされたら
労働審判制度は、主に「不当解雇トラブル」や、「未払い残業代トラブル」を解決する制度として利用され、概ね、1回期日で解決案の内容が決まるという、非常にスピーディーな手続です。
そのため、労働審判制度の手続の流れについて十分に把握しておき、適切な時期に十分な対応をしなければ、自社の主張を通すことができません。
そして、労働審判制度で会社から従業員に支払う解決金は、会社側の対応の仕方によって、200万円以上の差が出ることも珍しくありません。
労働審判の手続き
労働審判制度の手続は、通常は、従業員側が裁判所に労働審判手続申立書を提出することで開始されます。
従業員側から裁判所に労働審判手続申立書が提出されると、裁判所から会社に申立書が郵送されます。
この段階で裁判所から第1回の期日を指定されます。
裁判所から申立書が会社に届いてから、第1回の期日までわずか1か月程度の期間しかないことが通常です。
裁判所からは第1回の期日の1週間程度前までに、答弁書を提出するように指定されます。
会社は、指定された期日までに答弁書や反論の証拠を提出する必要があります。
期日は、裁判官1名と労働審判員2名で行われます。その他従業員本人とその弁護士、会社側から社長や管理者と会社側弁護士が出席するのが通常です。
第1回期日では、裁判官や労働審判員が、従業員本人や、会社側で出席した社長や管理者に直接質問するなどして審理を行います。
この第1回期日で、解決のおよその方向性が決まるため、第1回期日までには入念な準備をして臨むことが必要となります。
第2回期日あるいは第3回期日では、裁判所から調停案が提示され、調停案の内容で合意できるかについて、裁判所から従業員側、会社側の双方に検討を求められることが通常です。
以上の手続きを経て裁判所からの調停案の内容で合意に至らないときは、労働審判に進みます。
この場合、裁判所から労働審判という形で解決案が提示されます。
この労働審判の解決案は提示された翌日から2週間以内に、従業員側、会社側のいずれからも異議申し立てがなければ、確定します。
一方、この期間中に従業員側、会社側のいずれからから異議申し立てがあれば、労働審判として出された解決案は効力を失い、通常訴訟に移行します。
以上が、労働審判制度の手続の流れです。
特に注意すべきは、「第1回期日で解決のおよその方向性が決まる」という点です。しかし、申立書が会社に届いてから、答弁書の提出期限までは、3週間程度しか期間がないことが通常です。この期間中にできるかぎり、充実した答弁書を作成して提出することが、労働審判で会社側の主張を認めてもらうための重要なポイントです。
そのため、申立書が届いたら早急に弁護士に答弁書作成を依頼することが必要です。